特攻!MISTERY−SPOTS.


異次元電車

投稿者  sera 様



それは突然でした。

朝、友達からの電話で「おごるから、一緒に映画を観に行こう」と、

お誘いがあり、ウキウキと彼女の住む街まで出かけました。

久々に出会ったという事もあり、ついつい話に花が咲き、

気がつけば、夜もとっぷりと暮れておりました。

大急ぎで駅のホームに滑り込んできた電車に飛び乗り、


「・・・?」


何か不思議な違和感を感じながら、

ガラガラに空いている座席の真ん中に腰をおろし、

正面の窓ガラスに映る自分の顔をジッと見つめておりました。

程なく次の駅に停車し、開いた扉からは、乗る人も降りる人もありませんでした。


「・・・?」


音もなく、扉が閉まり、電車は滑り出しました。

その瞬間、私はたとえようのない恐怖につつまれたのでした。

確かに私はガラガラの車内にひとりで座席の真ん中に座っている。

だから、車内を映す鏡面になった窓ガラスには、私しか映ってない。はず・・・

なのに、私の両隣、いいえ座席全部がうまっているのです。

吐きそうな位のけだるさを覚え、耳鳴りまでしてきます。

私は、いつも数珠と経本を携帯しております。

それを、右手でつかんだ途端、車内の風景が一変いたしました。

ガラガラで静まり返っていた車内は、いつも通りの通勤帰りの人であふれ、

当然、正面に見えていた自分の顔も、今は通路に立つ人で見えません。
 
私はどこに居て、どこに行くんだったのでしょうか?

都内某所の○R線、午後7時すぎの出来事でした。




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